■ 太陽光発電: 自動追従システム再考(6) ~ 固定方式>追従方式? ~

 発電パネルを太陽の方向に自動追従(追尾)させる次の2方式の発電量をパネル固定方式と比較して表示するアプリを以前紹介しました。

(1)水平面内自動追従方式 (水平面内旋回のみ、首振りなし)
    パネルの方位角のみを太陽の方向に追従させる。
(2)完全自動追従方式    (水平面内旋回 + 上下首振り)
    パネルの傾斜角、方位角を太陽の方向に追従させる(パネル面 ⊥ 太陽光)。

 一般に固定方式に比べて、これらの自動追従方式の方が発電量が多くなりますが、1日単位で見るとまれに両者の大小が逆転することがあります。

 太陽光発電システムの発電量を推定するためには、傾斜面が受ける日射量「斜面日射量」を知る必要がありますが、一般的には水平面全天日射量の観測値から種々のモデル(Erbsモデルなど)により斜面日射量を推定します。 発電量は斜面日射量に比例するので、斜面日射量の比が発電量の比となります。

 さて、前記アプリで広島における2015年6月22日の斜面日射量(屋根傾斜角30度、南向き)を算出すると次のようになります(日射量の単位:MJ/m2)。

 Erbs2 < Erbs0 < Erbs1
 ここで、
  Erbs0: 固定方式における斜面日射量
  Erbs1: 水平面自動追従方式における斜面日射量
  Erbs2: 完全自動追従方式における斜面日射量

 
 1日の合計(表の右側のΣ値)は、通常は Erbs0 < Erbs1 < Erbs2 ですが、6月22日は完全自動追従方式より固定方式の方が斜面日射量(従って発電量)が多くなっています。

 この日は1日の日射量が比較的少なく、このような場合には斜面日射量に占める散乱成分が直達成分より支配的となって、必ずしもパネル面を太陽光線に直交する方向に向けることが最適とはならないからです。 また、斜面日射量を斜面直達日射量、斜面反射日射量、斜面散乱日射量の3成分に分解したとき、直達日射量は太陽光のパネルへの入射角のcosに比例するのに対して、反射及び散乱日射量はパネルの傾斜角のcosに関係することからも単純ではないことが分かります。

 しかし、月間、年間で考えると固定方式 < 水平面内自動追従方式 < 完全自動追従方式の順になります。

自動追従システム再考 (0) ~ 概要と基本計算式 ~
自動追従システム再考 (1) ~ 日毎の発電量比較 ~
自動追従システム再考 (5) ~ グラフィック描画 ~


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