■ 太陽光発電: 全天日射量の直散分離(METPV-3モデル)
         ~ 晴天指数、日照率、太陽高度角の影響 ~

 太陽光発電システムの発電量を予測するためには、傾斜面が受ける日射量(斜面日射量)を知る必要があります。

 斜面日射量を求めるには、水平面で観測された全天日射量(H)を直達成分(Hb、直達日射量)と散乱成分(Hd、散乱日射量)に分離する必要があり、これは一般に直散分離と呼ばれています。

 ここでは、水平面全天日射量から斜面日射量を推定するモデルとして、NEDOの標準気象データベース METPV-3を取り上げ、それに基づいて、
  晴天指数 K=H/H0 と 散乱比率=Hd/H
の関係を計算し、グラフ表示するアプリを紹介します。

 Erbsモデルでは散乱比率は晴天指数のみから計算されますが、METPV-3では日照率(S)や太陽高度角(α)の影響も加味され、更に月補正項(ΔM、1~12月)もあります。

 本アプリでは指定された日照率(S)、太陽光度角(α)、月(ΔM)に対して、晴天指数と散乱比率の関係を確認することができますが、少し注意が必要です。
 それは、METPV-3では晴天指数の全域(0.0~1.0)が常に意味があるということではないということです。
 日照率S、太陽高度角α、晴天指数Kは互いに独立でなく、密接に関連しているためです。
 例えば、日照率が高い時は晴天指数もそれなりに大きく、また太陽高度が低い時は晴天指数は一般に小さくなります。

 Erbs、METPV-3両者の実際の気象データに基づく晴天指数と散乱比率の関係については末尾に記載のサイトをご覧ください。

 具体的な計算式については後述のとおりです(Erbsモデルの計算式も併記)。
日照率 S:   太陽高度角 α:   月 :   Erbs併記
(注1)日照率、太陽高度角、月の各選択肢で「all」を選択すると、各項目の最小~最大値に対して一括表示される。
     この時、グラフ右側の凡例にマウスONさせると、対応するグラフが強調表示される。
(注2)Erbsモデルでの値の表示On/Offが可能。
◆ 直散分離および斜面日射量の計算式

  ● 記号
 H : 水平面全天日射量
 Hb : 水平面直達日射量
 Hd : 水平面散乱日射量
 H0 : 大気外水平面日射量
 α : 太陽高度角
 θa : パネルの傾斜角
 θz : 天頂角 (=90°- α)
 θ : パネルへの入射角
 p : アルベド(地表の反射率=0.2、入射光エネルギに対する反射光エネルギの比)
  ● 大気外水平面日射量: H0
 地球の大気圏外で受け取る太陽からの輻射エネルギー:1.367kW/m2(太陽定数)の水平面成分:
  H0 = 1.367 (r'/r)^2 sin(α)   (注)^ : べき乗を示す。
  r/r' = 1/[ 1.000110 + 0.034221cos(ωJ) + 0.001280sin(ωJ) + 0.000719cos(2ωJ) + 0.000077sin(2ωJ)]^0.5
 ここで、ω = 2π/365、J: 元日からの通算日数 + 0.5

 ・太陽と地球の平均距離:1.496×108km
 ・太陽光は大気を通過中に散乱や吸収を受けるので大気圏外の値よりも地表面に届く光は弱くなる。
  この減衰量は大気の状態や太陽光の波長によって大きく影響を受ける。
  ● 直散分離
 水平面全天日射量を直達成分(水平面直達日射量)と散乱成分(水平面散乱日射量)に分離する。
  H = Hb + Hd

(1)Erbsモデル
 ・H/H0 < 0.22 のとき
   Hd/H = 1.0 - 0.09(H/H0)
 ・0.22 < H/H0 ≦ 0.80 のとき
   Hd/H = 0.9511 - 0.1604(H/H0) + 4.388(H/H0)^2 - 16.638(H/H0)^3 + 12.366(H/H0)^4
 ・H/H0 > 0.80 のとき
   Hd/H = 0.165

  ・H/H0 = 0.22 ではほぼ連続であるが、H/H0 = 0.80 で若干の不連続がある。

(2)METPV-3における計算モデル
  Erbsモデルが晴天指数(H/H0)のみに関する多項式として散乱成分を算出しているのに対して、
  METPV-3では日照率や太陽の高度なども加味している。
   Hd/H = a0 + a1K + a2K2 + a3K3 + a4Kα + a5α + ΔM
  ここで、
   a0~a5: 係数(日照率に応じて、下表で与えられる)
   K  : 晴天指数(=H/H0)
   α : 太陽高度(度)
   ΔM: 月補正項(季節変化に対応)、下表

  < 積雪がない場合の直散分離モデルの係数 >
日照率a0a1a2a3a4a5
0.00.9917 0.1878 -1.1316 1.1880 0.0006 -0.0001
0.10.9387 -0.6614 3.1938 -4.0201 0.0011 -0.0003
0.20.8207 -0.6043 3.7338 -4.7505 0.0055 -0.0022
0.30.9639 -1.6321 5.3320 -5.4563 0.0117 -0.0053
0.40.3480 3.2402 -7.8567 5.8618 0.0123 -0.0060
0.5-0.2016 7.0225 -16.8540 12.6807 0.0063 -0.0037
0.60.2791 4.3946 -12.3914 9.9132 -0.0004 -0.0001
0.7-1.0221 12.2643 -28.2430 20.1753 -0.0088 0.0046
0.8-1.2422 13.0772 -28.7819 19.4876 -0.0128 0.0075
0.9-1.9463 16.1448 -32.8474 20.7344 -0.0160 0.0101
1.0-2.9693 20.8558 -40.0329 23.9266 -0.0189 0.0132

  < 積雪がない場合の直散分離モデルの月補正項 >
日照率月補正項 ΔM
0.0~0.10.0
0.2~0.5sin[2π(m - 3)/12] x 0.1 x (S-0.1) - 0.01
           m:月、 S:日照率
0.6~1.0sin[2π(m - 2)/12] x 0.04 - 0.01

  ● 斜面日射量(時間積算斜面日射量)の計算
・斜面直達日射量(直接法モデル)
  hb = Hb x cosθ/cosθz
・斜面反射日射量(均一反射モデル)
  hr = H x p x (1 - cosθa) / 2
・斜面散乱日射量(等方性モデル)
  hd = Hd x (1 + cosθa) / 2

斜面日射量はこれらの和で
  h = hb + hr + hd
これを、1日にわたって合計する。
(注)Erbs モデルは D.G.Erbsらが1982年、下記で発表した計算モデル。
   Erbs, D.G., S.A.Klein, J.A.Duffie:
    Estimation of the Diffuse Radiation Fraction for Hourly, Daily and Monthly Average Global Radiation, Solar Energy, Vol.28, No.4, pp.293-302 (1982).
(注)METPV-3 モデルはNEDOによる。

全天日射量の直散分離(実際の気象データに基づく計算例)

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