太陽光発電システムの発電量を予測するためには、傾斜面が受ける日射量(斜面日射量)を知る必要があります。◆ 直散分離および斜面日射量の計算式
斜面日射量を求めるには、水平面で観測された全天日射量を直達成分(直達日射量)と散乱成分(散乱日射量)に分離する必要があり、これは一般に直散分離と呼ばれています。
ここでは、水平面全天日射量から斜面日射量を推定するモデルとして次の2つを取り上げ、1時間毎の日射量観測値などから時間当たりの直散比率を計算し、表示します。
(1) Erbsモデル
(2) METPV-3における計算モデル
具体的な計算式については後述のとおりです。
(注1)グラフ中の各データの色は表中の色と対応する。
(注2)日射量の単位は kWh/m2。
(注3)表中の各項目(H0, H, .., Hd/H)をクリックすると個別にグラフ表示On/Off可能。
(注4)高度角4時30分、5時30分、...、19時30分での値である。
(注5)水平面全天日射量Hは0.01MJ単位の測定値のため、Hが小さい時はH/H0の誤差が大きい。
(注6)大気外水平面日射量H0は高度角α<0の時、H0<0となるがここではこの場合H0=0、H/H0=0としている。
H : 水平面全天日射量● 大気外水平面日射量: H0
Hb : 水平面直達日射量
Hd : 水平面散乱日射量
H0 : 大気外水平面日射量
α : 太陽高度角
θa : パネルの傾斜角
θz : 天頂角 (=90°- α)
θ : パネルへの入射角
p : アルベド(地表の反射率=0.2、入射光エネルギに対する反射光エネルギの比)
地球の大気圏外で受け取る太陽からの輻射エネルギー:1.367kW/m2(太陽定数)の水平面成分:● 直散分離
H0 = 1.367 (r'/r)^2 sin(α) (注)^ : べき乗を示す。
r/r' = 1/[ 1.000110 + 0.034221cos(ωJ) + 0.001280sin(ωJ) + 0.000719cos(2ωJ) + 0.000077sin(2ωJ)]^0.5
ここで、ω = 2π/365、J: 元日からの通算日数 + 0.5
・太陽と地球の平均距離:1.496×108km
・太陽光は大気を通過中に散乱や吸収を受けるので大気圏外の値よりも地表面に届く光は弱くなる。
この減衰量は大気の状態や太陽光の波長によって大きく影響を受ける。
水平面全天日射量を直達成分(水平面直達日射量)と散乱成分(水平面散乱日射量)に分離する。● 斜面日射量(時間積算斜面日射量)の計算
H = Hb + Hd
(1)Erbsモデル
・H/H0 < 0.22 のとき
Hd/H = 1.0 - 0.09(H/H0)
・0.22 < H/H0 ≦ 0.80 のとき
Hd/H = 0.9511 - 0.1604(H/H0) + 4.388(H/H0)^2 - 16.638(H/H0)^3 + 12.366(H/H0)^4
・H/H0 > 0.80 のとき
Hd/H = 0.165
(2)METPV-3における計算モデル
Erbsモデルが晴天指数(H/H0)のみに関する多項式として散乱成分を算出しているのに対して、
METPV-3では日照率や太陽の高度なども加味している。
Hd/H = a0 + a1K + a2K2 + a3K3 + a4Kα + a5α + ΔM
ここで、
a0~a5: 係数(日照率に応じて、下表で与えられる)
K : 晴天指数(=H/H0)
α : 太陽高度(度)
ΔM: 月補正項(季節変化に対応)、下表
< 積雪がない場合の直散分離モデルの係数 >
日照率 a0 a1 a2 a3 a4 a5 0.0 0.9917 0.1878 -1.1316 1.1880 0.0006 -0.0001 0.1 0.9387 -0.6614 3.1938 -4.0201 0.0011 -0.0003 0.2 0.8207 -0.6043 3.7338 -4.7505 0.0055 -0.0022 0.3 0.9639 -1.6321 5.3320 -5.4563 0.0117 -0.0053 0.4 0.3480 3.2402 -7.8567 5.8618 0.0123 -0.0060 0.5 -0.2016 7.0225 -16.8540 12.6807 0.0063 -0.0037 0.6 0.2791 4.3946 -12.3914 9.9132 -0.0004 -0.0001 0.7 -1.0221 12.2643 -28.2430 20.1753 -0.0088 0.0046 0.8 -1.2422 13.0772 -28.7819 19.4876 -0.0128 0.0075 0.9 -1.9463 16.1448 -32.8474 20.7344 -0.0160 0.0101 1.0 -2.9693 20.8558 -40.0329 23.9266 -0.0189 0.0132
< 積雪がない場合の直散分離モデルの月補正項 >
日照率 月補正項 ΔM 0.0~0.1 0.0 0.2~0.5 sin[2π(m - 3)/12] x 0.1 x (S-0.1) - 0.01
m:月、 S:日照率0.6~1.0 sin[2π(m - 2)/12] x 0.04 - 0.01
・斜面直達日射量(直接法モデル)● 太陽の高度角
hb = Hb x cosθ/cosθz
・斜面反射日射量(均一反射モデル)
hr = H x p x (1 - cosθa) / 2
・斜面散乱日射量(等方性モデル)
hd = Hd x (1 + cosθa) / 2
斜面日射量はこれらの和で
h = hb + hr + hd
これを、1日にわたって合計する。
・太陽赤緯: δ(太陽光線と地球の赤道面との角度、±23°27'の範囲で変化) [単位: 度]ホーム
δ = 0.33281 - 22.984 cos(ωJ ) - 0.34990 cos(2ωJ ) - 0.13980cos(3ωJ )
+ 3.7872 sin(ωJ ) + 0.03250 sin(2ωJ ) + 0.07187 sin(3ωJ )
ここで、
ω = 2π/365、閏年は ω = 2π/366、J: 元日からの通算日数 + 0.5
(本プログラムでは閏年は考慮していない)
・均時差: e(天球上を一定な速さで動くと考えた平均太陽と、実際の太陽との移動の差、17分未満) [単位: 時間]
e = 0.0072 cos(ωJ ) - 0.0528 cos(2ωJ ) - 0.0012 cos(3ωJ )
- 0.1229 sin(ωJ ) - 0.1565 sin(2ωJ ) - 0.0041 sin(3ωJ )
・時角: t [単位: 度]
T = Ts + (θ - 135)/15 + e
t = 15T - 180
ここで、
Ts: 時刻(中央標準時)
θ: 東経
φ: 北緯
・高度(仰角): α
α = asin(sin(φ)sin(δ) + cos(φ)cos(δ)cos(t))
・方位角: A(北 = 0, 東 = 90, 南 = 180, 西 = 270°)
sinA = cos(δ)sin(t)/cos(α)
cosA = (sin(α)sin(φ) - sin(δ))/cos(α)/cos(φ)
A = atan2(sinA, cosA) + π
・日の出時刻: t1 [単位: 時]
・日の入時刻: t2 [単位: 時]
t = acos(-tan(δ)tan(φ))
T1 = (-t + 180)/15
t1 = T1 - (θ - 135)/15 - e
T2 = ( t + 180)/15
t2 = T2 - (θ - 135)/15 - e
・南中時刻: tm(太陽が真南に来る時刻) [単位: 時]
tm = (t1 + t2)/2
or
tm = 12 - (θ - 135)/15 - e
均時差 e の値がプラスの場合には南中時刻が平均より早く、値がマイナスの場合には平均より遅くなります。
(注7)Erbs モデルは D.G.Erbsらが1982年、下記で発表した計算モデル。
Erbs, D.G., S.A.Klein, J.A.Duffie:
Estimation of the Diffuse Radiation Fraction for Hourly, Daily and Monthly Average Global Radiation, Solar Energy, Vol.28, No.4, pp.293-302 (1982).
(注8)METPV-3 モデルはNEDOによる。